「京都の禅寺で、庭園を散策しながら桜を楽しみたい!」。春になると、そんな想いに駆られる方も多いのではないでしょうか?
今回は、唯一無二の紅しだれ桜に出会える妙心寺塔頭「退蔵院(たいぞういん)」をご紹介!白黒の枯山水庭園を彩る見事な枝垂れ桜は、まさに一見の価値ありの美しさ。
せせらぎが心地良い「余香苑(よこうえん)」を散策しながら、国宝「瓢鮎図」も堪能してきましたよ♪今日は、そんな退蔵院の見どころをたっぷりレポートします!
- 妙心寺『退蔵院』の歴史
- 不変の美を求めた枯山水庭園『元信の庭』
- 瓢箪でヌルヌル鯰を捕獲!?国宝『瓢鮎図』
- 迫力満点!『陰陽の庭』を華麗に彩る紅しだれ桜
- 池のせせらぎに癒される♪桜と新緑美しい『余香苑』
- お抹茶&老松特製「是什麼」はいかが?
- なまずお守りや御朱印帳をお土産に♪
妙心寺『退蔵院』の歴史
退蔵院は、JR山陰本線「花園駅」から徒歩7分。車で訪れた私は、妙心寺の無料駐車場に車を停めて向かうことに。
建武4年(1337)、花園法皇によって創建された臨済宗妙心寺派の大本山である妙心寺。こちらの南門から境内に入ります。
歴史ある佇まいに、何だか心もキュッと引き締まりますね。
46もの塔頭を有する妙心寺は、境内もとっても広大!この迷路のような道を歩いて、退蔵院を目指します。この彷徨う感じ、ちょっと大徳寺に似てるかも?
松を眺めながら、石畳の道をテクテク。赤い山門前を左に曲がった先に、退蔵院はありました。
さぁ、退蔵院に到着です!さすが知る人ぞ知る桜の名所。ポツポツとお花見を楽しむ人の姿がありました。
退蔵院は、応永11年(1404)に無因宗因禅師を開山として建立されたお寺。「退蔵」という言葉には、「価値あるものをしまっておく」という意味があるそう。これは、陰徳(人に知られないようにして善行をする)を積み重ね、それを前面に打ち出すことなく、心に秘めながら布教することを表しているんですって。
応仁の乱で、妙心寺とともに炎上した退蔵院。1597年に亀年禅師によって再建され、現在に至ります。
拝観受付横の手水。ちょこんと座ったカエルさんの隣には、プカプカ浮かぶ桜の花びらが。ふふふ、可愛らしくて心がほっこり和みますねぇ。
退蔵院の拝観料は600円。それでは早速、パンフレット片手に庭園へとお邪魔しましょう!
不変の美を求めた枯山水庭園『元信の庭』
まず向かったのが、室町期の画家・狩野元信が作庭したという枯山水庭園「元信の庭」。
「元信の庭」は、こちらの方丈から眺めることができます。実はこの方丈、あの剣豪・宮本武蔵が修行した場所でもあるんですよ~!
禅と剣の道には、精神的な共通点があるのだとか。宮本武蔵と同じ場所に立っていると思うと、何だかゾワゾワしちゃいますね(笑)
そして、こちらが「元信の庭」。ごつごつとした風格ある石組が目を惹く枯山水庭園です。
白砂に爽やかな新緑が映えますね~。太陽の光を浴びて、風でひらひら揺れる椿の葉がとっても綺麗でした♪
庭園には主に常緑樹が植えられ、一年中変わらない「不変の美」が表現されています。
狩野元信が、自身の描いた絵を立体的に表現したという「元信の庭」。画家として円熟した70歳頃の築庭で、彼の最後の作品が造園であったことでも注目される名庭です。
方丈の正面には座布団が敷かれ、ゆったり座ってお庭を眺めることも。
京都に来たら色々歩き回りたくなりますが、こうやって1つのお寺でゆったり過ごすのも贅沢なものですね。
瓢箪でヌルヌル鯰を捕獲!?国宝『瓢鮎図』
さて、退蔵院の最大の見どころの1つと言えば、国宝「瓢鮎図(ひょうねんず)」ではないでしょうか?
山水画の始祖である如拙(じょせつ)が、足利義持の命によって描いたという瓢鮎図。「小さな瓢箪で大きなナマズをいかに捕まえるか」という禅の問題が、水墨画で表現されています。
この難問にいかに立ち向かうのか?水墨画の上に書かれているのが、京都五山の高僧31人の賛(回答)となっています。
ちなみに「鯰」なのに漢字が「鮎」となっているのは、当時ナマズを鮎を書いていたからだそう。へ~、何とも単純明快!
髭をたっぷりこしらえた野性味溢れる男性。こんな小さな瓢箪じゃ、ヌルヌルのナマズを到底捕まえられそうにありません!
実際の高僧の賛も、「男は瓢箪を手にナマズを抑えようとするが、瓢箪もナマズもすべりやすく、抑えつけられぬ。これを見る者は大笑い(明叔玄睛)」と言ったように、捕まえるのは無理だとしつつも、ユーモアを交えた回答がちらほら。きっと当時の将軍・義持も満足したことでしょう!
私ならどうするか?う~ん、ナマズの動きが鈍くなる満腹時を狙って、川へダイブ!そして、素早く手掴み!って、もはや瓢箪使ってないし、電気ナマズだったら一発アウトか(笑)はてさて、皆さんならこの問いかけにどのように答えますか?
迫力満点!『陰陽の庭』を華麗に彩る紅しだれ桜
さぁ、いよいよお目当ての紅しだれ桜に会いに「陰陽の庭」へと向かいましょう!
細い小路をテクテク。どんな桜に出会えるのか、ドキドキしますねぇ。
この道の突き当りを右へ曲がった瞬間・・
わぁ~、悠々と両手を広げる立派な紅しだれ桜が目に飛び込んできました!枯山水庭園を彩る主役級の一本桜。まるでピンクの傘のよう。
まさに圧倒的な存在感!この桜は樹齢50年程で、平安神宮の紅しだれ桜の孫桜なのだそう。なんと、JR東海「そうだ、京都いこう」のCMに使われたこともあるんですよ~。
傘の中に入って、桜さんとご対面。ふふふ、ピンクの八重桜が可愛いですね♪
こちらの枝垂れ桜は比較的遅咲きで、訪れた際には8分咲き程。それでも十分綺麗で、退蔵院の春を満喫できました!
紅しだれ桜をより美しく演出しているのが、左右に造られた「陰陽の庭」。白と黒の敷き砂の対比が何とも個性的な枯山水庭園です。
こちらが、黒砂の「陰の庭」。おぉ、黒色の枯山水庭園とは珍しい!ずっと見たかったから感激!黒砂に舞い落ちた花びらも雅やかだなぁ。
人の心や物事の二面性の「陰」の部分を伝えているという「陰の庭」。陰さえもこれだけ美しいのならば、もうすべて受け入れようかしら(笑)
陰とは対照的な「陽の庭」がこちら。わぉ、一気に明るくなりました!いつもこんな心持ちでいたいものですが、人間だもの♪皆さんはどちらのお庭がお好きですか?
陽の庭に7つ、陰の庭に8つの合計15の石が配された「陰陽の庭」。東洋では「15は完全を表す数字」とされ、ここにもまたメッセージが込められているのかもしれませんね。
(ご参考)同じく15の石を配した「龍安寺」の石庭もお見逃しなく!
池のせせらぎに癒される♪桜と新緑美しい『余香苑』
「陰陽の庭」で桜を楽しんだ後は、余香苑(よこうえん)をぶらり散歩。
「昭和の小堀遠州」と称えられる中根金作氏が作庭した余香苑。人もまばらで、初々しい新緑が何とも心地良い。
足元には、美しい苔の姿も。こんな素敵な庭園を歩いていると、ドタバタな日常の疲れも吹っ飛びます(笑)
さぁ、余香苑の一番のビュースポットに到着しましたよ~!
ひょうたん池を中心に、桃色の桜と爽やかな楓のグリーンが美しい心和む風景。
池のせせらぎも心地良く、叶うならば丸1日ここにいたいくらい!水面を彩りながら、スイスイ泳ぐ鯉をのんびり眺めてみたり。何だろう、この無心になれる時間は。これって、私が今一番欲しかった贅沢なのかも・・!(育児でちょっぴり疲労中です笑)
池の反対側からも一枚。奥に見える藤棚の下に座って、のんびり庭園鑑賞するのがオススメですよ~♪
桜に紅葉、夏は池に蓮が咲く余香苑。春夏秋冬、いつ訪れても四季折々の表情を楽しめるのが魅力です。
庭園を歩いていると、水琴窟を発見!苔むしたつくばいからピョンと伸びた草。いやはや、何とも味があります。
柄杓で水を落とした時のコンッコンッという音が、涼やかで癒されるんですよねぇ。
空を見上げると、青空の下でキラキラ黄金色に輝く青もみじが!
季節が巡って、秋にはきっと美しい紅葉が楽しめるんだろうなぁ。
余香苑を歩いていると、四季のある日本のありがたみを改めて感じますね。張り詰めた心がほわっと解放されるような、穏やかな時間を過ごすことができました♪
お抹茶&老松特製「是什麼」はいかが?
退蔵院では、庭園を眺めながらお抹茶をいただける茶席があるのをご存知でしょうか?
お値段は、お抹茶に退蔵院オリジナル茶菓「是什麼(これなんぞ)」が付いて500円(拝観料別途)。しかもお茶菓子は、和菓子の老舗「老松」さんが作る本格派なんですよ~!
瓢鮎図にちなみ、生菓子の上にナマズさんと瓢箪があしらわれた「是什麼」。まさに、退蔵院特製のお茶菓子です。
今回私はいただく時間がなかったのですが、季節のドライフルーツが入っていて人気なのだそう!
お茶席「大休庵」の受付時間は、9:30~16:30まで(2021年4月現在)。近くの売店で申し込みができるので、気になる方は是非立ち寄ってみてくださいね!
また退蔵院では、桜・蓮・紅葉の時期の年3回、ミシュラン店「阿じろ」の精進料理とともに庭園鑑賞できる特別拝観も開催されます。お茶席はもちろん、美味しい料理を食べながら優雅なひとときを過ごしてみるのも良いですね。
なまずお守りや御朱印帳をお土産に♪
お寺を訪れると、「どんなお土産があるのかな?」と売店を覗いてみるのも楽しみの1つ。
退蔵院にもご覧の通り、色んなお土産が売られていましたよ~!
その中から気になるお土産をご紹介すると・・
はいこちら!「なまずお守り¥800」。おぉぉ、めっちゃシュール!でもなんか気になる・・(笑)
手作りだという木彫りのナマズさん。よ〜く見ると、愛嬌たっぷり♪ストラップ型なので、いつも一緒にいられるのも嬉しいですよね・・!
こちらは、「なまずTシャツ」。Tシャツの中心で、にんまり微笑むナマズさんが愛おしい〜(笑)
前は無地でシンプルに、背中のナマズさんで魅せる小技の効いた一枚。退蔵院を訪れて、ナマズさんファンになったあなた!是非、お土産にいかがでしょうか?
他にも瓢鮎図にちなんだメモ帳や、「御朱印帳¥1500」も!
退蔵院でしか買えないアイテム。要チェックですよ~!
おしまいに。瓢箪型が可愛いお茶席の小窓です。うぅ、素敵すぎてキュンキュンする!
今回、憧れだった紅しだれ桜を尋ねて訪れた退蔵院。癒しの余香苑をはじめ、個性的な枯山水庭園に国宝「瓢鮎図」まで、想像以上に沢山の素敵な出会いがありました!
また季節を変えて、紅葉や蓮の時期にも訪れてみたいな。あ、座禅体験(事前予約制)もできるそうなので、参加してみるのも面白そう!
皆さんも是非、日本の美しい四季を感じに退蔵院を訪れてみてくださいね。きっと帰る頃には、心も穏やかになっているはずですよ♪
住所:京都市右京区花園妙心寺町35
アクセス:JR山陰本線(嵯峨野線)「花園駅」から徒歩7分
拝観時間 9:00~17:00(受付終了)
拝観料:600円
駐車場:あり(無料)
公式HP:http://www.taizoin.com/